銀盤少年
「なんでこれを俺に? 馬鹿な俺でも、これがヒロにとって大事なもんだってことぐらいはわかる」
謂わばこれは、ヒロのスケート人生の集大成。
血と汗と涙の結晶。ヒロの全てが詰まっているといっても過言じゃない。
「今まで黙ってたのは、俺に跳ばせたくなかったからだろ? なのになんでいきなりこれを?」
「カズは質問ばかりだね。日本人は空気を読むのが上手いんじゃないの?」
「誤 魔 化 す な」
「最初は止めようと思ったよ。俺みたいになってほしくなかったからね。でもそれは無理だってこともわかっていたから、今まで黙って見てた。
もしかしたら諦めるだろうと淡い期待もしていたんだけど、シーズン中もこそこそやっていたみたいだし?
開拓者のままで無意味に身体を消耗するより、いっそのこと挑戦者になった方が身体の負担も減るだろうと考えて、長年封印していたそれを手に取ったってわけさ」
「お前、意外とポエマーだよな」
「蹴っていい?」
「ごめんなさい……誠に申し訳ありませんでした……!」