銀盤少年
先人の歩んだ険しい道筋を辿り、途切れた終着点の先を歩む者として―――
「順位は気にするな。お前らしい演技をしてこい」
我に帰ったのは、先生の言葉を聞いた直後だった。
どうして今思い出したんだろう。近くにヒロがいたからか?
黙ったままの俺に先生が訝しげな表情をするが、大丈夫ですと頷いて所定の位置に駆け出した。
途中リンクサイドにいるヒロと目が合って、小さく頷き目配せする。
あの資料を借りた時、ヒロから「今シーズンでの実戦投入はするな」と釘を刺されていたのだ。
ごめんヒロ。来シーズンまで待てねえわ。
いつもの癖で口元を右手の甲で拭うと、薬指につけたリングの感触が唇に伝わってくる。
スイッチが切り替わる。