銀盤少年
「それで仁君はどうして残ってるわけ? 裏でインタビューが控えてるんじゃないの?」
「ケンとカズの演技も観るために決まってんじゃん。そういう二人も、だろ?」
「まーね」
考えることは一緒のようだ。
リンクにはカズの姿。集中しているのかその目付きは真剣そのもので、ウォームアップを淡々とこなしている。
一瞬カズと目が合う。その眼差しにビクッと身体が震え、背筋に冷たいものが伝った。
なんだこの感じ? 鳥肌が凄い。
「まさか……」
俺の呟きは、会場に流れた音楽によって遮られた。
ジョージウィンストン作曲『winter into spring』
ピアノの旋律が心癒す、カズには珍しいしっとり系プログラム。
全体的にスローテンポで、高いスケーティングが求められる。