銀盤少年
こういう楽曲は誤魔化しがきかない。エレメンツの完成度もだが、なにより表現力が問われることになる。
難しい音楽。だからこそカズは挑戦したんだろう。
演技が始まると同時に、カズの表情に色が戻る。
先ほどまで無表情だったのに、今は柔らかな笑みを浮かべている。切り替えの早さもカズの武器だ。
エッジに乗ってスピードを出す。
コンパル重視の練習メニューのお陰か、エッジの乗り方も上手くなった。
元々演技全体の疾走感というものには定評があったけど、そこは典型的なパワータイプ。
助走を増やして無理にスピードを出していたので、無駄に体力を使うばかりかPCSのスケーティングスキルの項目で足を引っ張っていた。
けど今は違う。どこに体重をかければ自然と進むか、効率よく速度を出せるかわかってきている。
氷を削る音が小さくなり、ストロークが伸びるようになった。JGPSの時よりも滑りがいい。
隣の二人には及ばないけど、スケーティングは格段に良くなっている。