銀盤少年
ただ、
「速すぎる……」
最初に予定しているのは3A。
だけどこのスピードは3Aにしては速すぎるのだ。
ずっと観てきたからわかる。カズは3Aを跳ばない。
予感は的中。ジャンプの軌道に入ったが、それは3Aのものじゃなかった。
軌道、態勢、エッジ、構え。
細かい違い。それらを見抜けるのは、俺ただ一人。
アレの跳び方を教えたのは、俺なのだから―――
ピアノの柔和な調べとは裏腹に、凄まじい高さと回転速度でカズが跳び上がる。
空気を裂く音。壁を超える音。
超スピードで突っ込んだジャンプは、フェンスギリギリの所まで滑空距離を伸ばして行く。