銀盤少年
夢でも幻でもなんでもない。これは現実。今この瞬間起こった事実。
非公式を含めて、二人目の成功者。ナショナル大会とはいえ、大会での成功は世界初。
回転不足かどうかはジャッジの判断を待つしかない。
だけど、カズは右足一本で降りてきた。それだけで十分な成果だ。
あの馬鹿、無茶しやがって。
「四回転半。4Aだよ」
ISUが定めているジャンプの頂点。最高峰の四回転。
それを跳んだ。カズが決めた。
「まっ、俺の方がもっと綺麗に跳べたけどね」
師匠からの愛の鞭は、今のカズには届かない。
余韻に浸るのはまだ早い。まだ演技は始まったばかりなのだ。
勢いをそのままに、後ろ向きでジャンプの構えを見せる。