銀盤少年

今度約束を破ったら右肩の関節を無理やり外すからと妙に生々しい脅しを受けた。本当にやりかねないから恐い。


俺の身を案じてのことだってのは重々承知だけど、ちょっとやり方が恐すぎます。


六分間練習が終わる。


次々と選手がバックヤードに下がる中、最終グループ第一滑走の俺はリンクに残る。


途中狼谷とすれ違ったが、なにやらしたり顔で人を小馬鹿にしたよう笑みを浮かべやがった。


挑発ですか。そうですか。


現状世界ジュニアの代表レースで、狼谷は一歩遅れている。


俺は全日本ジュニア優勝、タカさんはファイナル銅メダル、仁は世界ジュニア王者という実績がある。


少なくともこの三人の誰かよりも上に立たなければならないだろう。


なのにこの余裕。どうやらピークが見事に嵌ったようだ。


もし俺が狼谷と一緒に世界ジュニアへ行きたいと言ったら、あいつは顔を歪ませて「気持ち悪い」と即答すんだろうな。
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