銀盤少年
途絶えた軌跡を俺が受け継ぐ。兄貴の想いを連れて行く。
だから今日だけは、絶対に結果を残さなければならない。
そして出来れば、二年前のメンバーで……。
いつもの儀式を終えて、スイッチを切り替える。
提出した構成表の真上には、4Aの二文字を申請した。
全日本ジュニアで跳んだ四回転半が未熟なのは、跳んだ本人が一番理解してる。
たまたま認定されただけ。国際大会なら回転不足だ。
今度こそ決める。誰も反論出来ないぐらい、完璧に回り切ってみせる。
エッジに乗ってスピードを上げる。
ヒロの映像を頭の中で再生させて、和訳したアドバイスを頭の中で黙読する。
タイミングは一瞬。壁にぶつかって行くように、大胆に且つ繊細に。
最大の敵は恐怖心。数ミリの誤差も許されない。少しでも億すれば、逆にリンクへ叩きつけられることになる。