銀盤少年
だけど苦しさなんて演技中には微塵も感じさせなかった。
常に微笑を浮かべて、当たり前のように3Aや3-3を跳んで、滑って。ポテンシャルの差を思い知らされた。
「ヒロノ! 採点は!?」
狼谷が声を荒げる。
奴の演技に心奪われていた俺は、本来の目的を思い出した。
そうだ。俺、こいつと戦ってるんだっけ。
「とりあえず落ち着いて。では、技術審査員の草太君。批評をどうぞ」
「えっ!? あの……」
「大丈夫。感じたことを口にすればいいだけだから」
「は、はい……」
狼谷の様子をチラチラ窺い、恐る恐る口を開く。
「えっと……乱れてたけど3Aや3-3を跳んでいて、純粋に凄いなって思いました。ステップも見応えがあって、かっこいいなぁって……」