銀盤少年
決着
リンクサイドに戻ったケンちゃんに、タオルと水を手渡した。
大量の汗を噴き出して、今も息も整えるのに必死になっている。
そりゃそうだ。いくらケンちゃんほどの実力者とはいえ、久しぶりに滑って息を切らさないほうがオカシイ。
ましてあんな大技を惜しみなく披露したんだから、きっと明日は全身筋肉痛だろう。
まあ、普段から跳んでいたのなら大丈夫だろうけど。
ペットボトルの水を一気に半分ほど飲み込むと、乱暴に口元を袖で拭ってリンクの中央に視線を向けた。
そこにいるのはフィギュアスケート部部長、カズ。ケンちゃんの対戦相手で、フィギュアスケート部の命運を握っている男だ。
カズの演技を観るのは、JGPSのモスクワ大会以来。約半年ぶりだ。
ジャッジじゃなかったら気楽に楽しんでいたけれど、フィギュアスケート部の未来がかかているので真剣に審判しなくては。
真剣モードに切り替える。カズが本気で滑るのなら、俺も本気でジャッジをするだけだ。
実際に点をつけるのは、草太君と優希ちゃんの二人だけどね。