銀盤少年
死の舞踏はケンちゃんが現役時代、全日本ジュニアで三位になった時のプログラム。
本人も大変気に入っていて、試合でも出場選手の中でトップの演技構成点を獲得していた。
技術的は満足な出来ではなかったはずだが、表現という面ではより深みが増していて本人も納得していたのだろう。
だからカズの得点と差がないことに怒りを覚えたのだ。
「んなっ!? なんだと貴様ぁ!」
「お、落ち着いてください……!」
今にも飛び掛かりそうなカズを草太君が宥めている。
はぁ。どうしてこの二人はこんなに喧嘩っ早いのやら。
まあ、あの発言はケンちゃんが悪い。怒るのも無理はないか。
審査委員長として、納得のいく答えを出してやろう。
「最初に言ったと思うけど、基本的なルールは現行に乗っ取るって。現在の芸術点、演技構成点は五つの項目からなるのはわかってるだろ?」
現行の採点方式は、大きく分けて技術点と演技構成点の二つに分かれる。