銀盤少年
選手の力量とプログラムの内容にズレが生じてアンバランスに。これはばかりはどうしようもないことだけど、カズにとっては運よく救われた形になった。
「だから優希ちゃんの採点は妥当だと思うよ。少なくとも安易な考えで得点は付けていない。だろ?」
優希ちゃんはコクコクと何度も頷く。
ケンちゃんの繋ぎの薄さを指摘しているから、直感や贔屓で採点はしてない。
それは批評を受けたケンちゃんが一番理解している。
どうやらわかってくれたのか、カズを睨んでこそいるが反論はしてこない。
技術点についても言及してこないことから、そちらの方は完全に納得しているようだ。
ケンちゃんも元トップ選手、心の奥底ではカズの演技を認めているんだろう。
素直じゃないところは、今も昔も変わってないか。
「あれ? でもヒロ君、引き分けの場合はどうなるの? 再戦?」
「あ、そうだよヒロ! 引き分けになった時のことなんて考えてないぜ?」
「嗚呼、それなら大丈夫だよ」