銀盤少年

だってケンちゃん、入部こそ認めたものの試合に出るとは一言もいってないんだよなぁ……。


試合に負けたらスケートを続ける。という約束で無理やり始めた勝負だけど、続けるといっても色んなニュアンスがある。


趣味程度に収めるのか。選手として本格的に続けるのか。そこまでは定義していない。


水を差すのも悪いので、心の奥にそっと置いておく。


そこをなんとかするのが、俺の務めなわけだ。






「おばさんから色々聞いてはいたけど、まさか3Aを跳ぶとは驚いたよ。影で頑張っていたから、技術をキープ出来たんだね」


センターの入り口で待ち伏せて、着替えを終えたケンちゃんを捕まえる。


隣で歩きながら声をかけるけど、負けたことが悔しいのか、はたまた俺の挑発が気にくわないのか、一瞬だけ目を合わせると眉間に皺を寄せてまた小さく舌打ちをした。


「たまたま跳べただけだ」


「そんな嘘、俺に通用すると思う?」
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