銀盤少年
一回転
鬼コーチ
最低ラインの五人の部員を確保して、なんとか廃部の危機を乗り越えたフィギュアスケート部。
やれやれ、これで練習にも身が入るってもんだ。
俺と草太はスケートクラブに所属していてコーチもついているが、クラブのスケート場は私営リンクなため、一般のお客さんに混じって練習することになる。だから余り本格的な練習は出来ない。
んで、一般客の通常営業時間が終わるまでスポーツセンターのリンクを借りて、そのままクラブに直行するという態勢を取っている。
少人数でリンクを広々と使えるのは気持ちがいい。
コーチもいないし好き勝手練習していたのだけど、今はヒロが組んだ練習メニューを消化している。
俺と草太に指定されたのはコンパルソリー。フィギュアスケートというスポーツの基盤になった、氷上に課題の図形を描くという競技。
今は廃止されたコンパルソリーだけど、スケートの核となる滑りを鍛えるにはもっとも適している練習方法で、タクさんやミューさんも必ず練習メニューに取り込んでいるらしい。
だけどコンパルって、なかなか練習出来ないんだよな。
どこのリンクも選手で一杯一杯の状況で、ゆっくり図形を描く暇もスペースもない。