銀盤少年
ヒロから言い渡された練習メニューは、ルッツの矯正に重点を置いたものだった。
ルッツジャンプとフリップジャンプ。二つとも後ろ向きの体勢から右足のトウを突いて跳びあがるジャンプで見た目はほぼ一緒なのだが、踏み切りに大きな違いがある。
踏み切る足のブレードのエッジが内側になっているものがフリップ。エッジが外側になっているものがルッツ。
最近この踏み切り時のエッジ判定が厳しくなった。
フリップなのにエッジが外側になったり、ルッツなのに内側になったりすると、GOEで減点されるのだ。
重度のエッジエラーでは必ず減点。軽度のエッジエラーでも、必ずではないがほぼ減点される。
俺はルッツのエッジがやや内側、インサイドエッジで踏み切る癖が付いていた。
実際試合でもちょこちょこ減点されていて、無理に修正して得意なフリップも乱れてはいけないので騙し騙しで跳んでいたのだけど。
「だけどエッジがフラットじゃん。カズのルッツはエッジさえ無視すれば加点が貰える出来なんだからもったいないって。今の内に修正してフリーで二本揃えることが出来ればかなりに武器になるし」
「言ってることはわかるけどさぁ……」