銀盤少年
「アレってなに?」
「まあなんというか、他にもなんかないかなーってことで」
「他にって、例えば?」
「例えば……うーん。例えばさ……愛の夢とか?」
あの曲は結構好きだ。名曲だし色んな選手も使用している。
なかなか良い選曲だと思っていたのに、目の前の人物はプッと吹き出しやがったのだ。
「おい、なに笑ってんだよ」
「だって……まさか、カズの口、から……愛の夢、とか……ぐふぅっ!」
これキレていいよね? キレていいレベルだよね?
必死で笑いを抑えようとしているが、漏れた空気が口の端から出ていて全く誤魔化せていない。
なにが可笑しんだよ。確かに俺のキャラじゃないけどさ。なにもそこまで笑わなくたっていいじゃんか。
クソッ。愛の夢とか言うんじゃなかった。