ハルオレ-episode彼方-



「ほら。栄養付けたほうがいいんじゃないかと思ってお粥作ってきた。食べれそうなら冷めないうちに食べろよ。」

「早瀬先生…。その…。す、すみません。すいませんでした!」


うあああああ。
風邪で廊下の床で寝ているところをわざわざ運んでもらったなんて…。

考えるだけで恥ずかしくて…死にそう!しかもお粥まで作ってくれたなんて…謝っても謝りきれないよ!!

「何言ってるんだよ。そんなこと気にするな。」

早瀬先生はお盆を持ったまま、ベットに腰掛けれて笑った。


そんな早瀬先生の顔を見たら、僕はなんだか泣きそうになった。

今まで病気になったときは親に看病してもらうのが当たり前だったのに、一人になったんだから病気になったら本来は自分でなんとかしなくちゃいけないのに。


僕は…。


「ほら。お粥食べれるか?」

俯いた僕に早瀬先生が優しく声をかけてくれる。

もう僕は胸の中がいっぱいいっぱいになった。


「彼方?」


僕は涙が止まらなくなった。
早瀬先生の前なのに我慢が出来なかった。
そんな泣き出した僕に早瀬先生は何も聞かず、ただ僕の頭をなでてくれた。



その後、落ち着いた僕は早瀬先生の作ったお粥を食べながら、早瀬先生といろんな話をした。

早瀬先生は本当に優しくて良い人だった。だからこそ良くして貰うのが申し訳なくなった。

とくにこのお粥には嬉しい反面、僕にはもったいないくらいだ。
お粥にはほんのり甘い香りが漂っていたが、早瀬先生曰く隠し味の蜂蜜とのこと。

そんな蜂蜜の甘さのせいなのか。
僕の心の中もなんだか甘い。そんな不思議な感覚だったことを今でも覚えている。

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