ハルオレ-episode彼方-
「いいなー。俺専業主婦という名のニートだもーん。」
翔のやつ、いつも普段何をしてるんだろうとは思っていたけどまさかニートだったんたんて…。
思えば、こいつを蘭藤荘の外で見たことがないし。
ってことは、こいつは毎日部屋にこもってこのポータブルゲームをやってるのか?
…本当にそうな気がしてそのことは聞かないほうがよさそうだな。
「専業主婦という名のニートってなんだよ。羨ましいならお前もバイトすればいいじゃん?」
「え~。」
羨ましいけどバイトするのは嫌なのか?この矛盾男は。
「バイトしてもいいけどさ~。正直お金には困ってないんだよね。俺の父親、会社経営してるから必要なお金はいつでもくれるし。」
ほほぉ。新しい情報だな。こいつボンボンの息子ってわけか。道理で世間知らずを通り越した感性をもっていらっしゃると思ったら。
「別にバイトはお金じゃないよ。僕はそう思ってるけど。」
「お金じゃない?じゃあ、なんで君は働いているの?」
なんで働いているか。僕も正直お金には困らない環境を持っているけど…。
「僕は音楽が好きなの。それだけだよ。」
「……へぇ。じゃあ、彼方は好きな音楽があるから、そこで働いてて楽しいんだ。」
「…?」
そう言った翔の表情が曇った気がした。
「あ…ああ。楽しいよ。少なくとも家にこもってるよりはずっとね。じゃあ、僕もう行かないと遅刻しちゃうから。」
しまった。無駄な話をついしちゃったじゃないか。早く行かないと本当に遅刻してしまう。
僕がに背を向けて行こうとした瞬間。
「待って!」
グイッと服の袖をつかまれる。