ハルオレ-episode彼方-
「おい!翔!!」
僕が呼び止めるように叫んだその時、
「あ、そうだ。」
なぜか出発するのかと思っていた翔が振り返った。
「彼方。」
そして翔がジッと僕のほうを見た。
「な、なんだよ?」
僕はよくわからないけど後ずさりしてしまう。
翔はそんな僕をしばらく変に見つめ、
「俺さ、ここに来て良かった。」
「は?」
「あはは。ただそう思っただけ。じゃあね!」
ニッと笑うと、さっさと単車で蘭藤荘を出て行った。
…なんだ?
アイツ…ここに来て良かった?
何今更改まった事言ってんだよ。
…ふぅ。相変わらず頭イカレてるな。
まぁ、いいや。きっと翔のことだ。
忘れた頃に帰ってくるだろ。
チッ。帰ってきたらただじゃおかないからな。
翔の単車のエンジン音が遠ざかると僕は窓を閉めた。
…はぁ。嵐が去ると本当に静かになるな。
今日はバイトは休みだし…シャワーでも浴びて僕も出かけようかな。