ハルオレ-episode彼方-


「おい!翔!!」


僕が呼び止めるように叫んだその時、


「あ、そうだ。」


なぜか出発するのかと思っていた翔が振り返った。


「彼方。」


そして翔がジッと僕のほうを見た。


「な、なんだよ?」


僕はよくわからないけど後ずさりしてしまう。

翔はそんな僕をしばらく変に見つめ、


「俺さ、ここに来て良かった。」

「は?」

「あはは。ただそう思っただけ。じゃあね!」


ニッと笑うと、さっさと単車で蘭藤荘を出て行った。




…なんだ?
アイツ…ここに来て良かった?
何今更改まった事言ってんだよ。



…ふぅ。相変わらず頭イカレてるな。

まぁ、いいや。きっと翔のことだ。
忘れた頃に帰ってくるだろ。

チッ。帰ってきたらただじゃおかないからな。



翔の単車のエンジン音が遠ざかると僕は窓を閉めた。


…はぁ。嵐が去ると本当に静かになるな。
今日はバイトは休みだし…シャワーでも浴びて僕も出かけようかな。

< 31 / 33 >

この作品をシェア

pagetop