ハルオレ-episode彼方-


そこは…。


ライブハウス
『ジュレイヤード』


毎晩のようにアマチュアバンドたちがライブを開く、この小さな町の外れにポツリと建っているライブハウス。

小さな店だが、店長の音と機材のこだわりとアマチュアバンドの人気で毎日お客さんで溢れている。


僕は町を歩いていて、このライブハウスの前を通りかかった時、つい足を止めた。

実は僕は中学のころから音楽が好きだった。元々絶対音感を持ってたこともあり、趣味で作曲したり、歌ったりとしていた。


音には敏感だった。

だからすぐに感じた。
僕の足を止めたのが、このライブハウスの音そのものだと。


僕が中から聞こえる音に浸っていると、たまたま裏から出てきた店の関係者らしき男が煙草に火をつけながら僕の近くにやってきた。

「お前、ここの音好きか?」

僕の隣にいきなり並んだ途端、男は僕に話しかけてきた。

その男、見た目は30歳半ばで無精髭でいかにも『ロック』って言葉がとても似合いそう、そんなやつだ。

「はい。好きです。」

「そうか。好きか…。」

突然好きかどうか聞かれて率直に答えちゃったけど、気持ち悪いやつだと思われたかな?

「あ、すいませんでした!こんな所で立ちつくしてしまって。」

って!相手、店の関係者じゃん。
妨害のように扉の前につったてるところを見られたんだ。

「別に気にするな。そんだけうちの音気に入ってくれたってことだろ?」

「は、はぁ…。」

「で、お前、名前は?」

「菅谷彼方です。」

「彼方か…。学生か?まだ10代だろ?」

「はい。15歳です。でも学生じゃないです。」

「学生じゃない?じゃあ、フリーター?それとも無職か?」

「え、えっと。その無職だと思います。」

やたら質問攻めされた。
そして相手が警察でもないのに最後は職業まで質問された。
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