ハルオレ-episode彼方-

宮下翔



新しい家も決まった。

仕事も決まった。


僕の手にいれた新しい日常。
そんな日常を送っていると、時間は思った以上に流れるのが早い。


僕が蘭藤荘に来て、あっという間に2ヶ月が経過した。


2ヶ月もたつと、そろそろバイトにも慣れてきて、店長とはバイトの後にラーメンを食べに行く仲となり、帰宅するのはいつも朝方。

この日もいつも通り、バイト後にラーメンを食べて朝日が上る前の薄暗い中、蘭藤荘に帰ってきた。


だけど、今日はいつもと違った。
部屋に向かおうと廊下を歩いていると、見知らぬ人が視界に入った。


あれ?人がいる。こんな時間に?…というか僕の住んでるこの棟って僕以外誰も住んでなかったんじゃなかったっけ?
はっ。まさか幽霊とか?

そんなことを考えながら僕はその謎の人物に近づいていったその時。

謎の人物も僕の存在に気づいたのか視線をこちらに向けてきた。

「おはよう。」

しかもいきなり謎の人物は僕に声をかけてきた。

「おはようございます。」

僕は相手が何者かわからないが、反射的にあいさつを返した。

っていうか、こいついったいだれなんだ?

だんだんと近づくに連れて、謎の人物の顔が薄暗い中はっきりしてきた。

肩にかかるかかからないか少し長めの髪、整った顔の男…年は僕と同じくらいか?

「あの…。」

「あー、ごめんごめん。いきなり話しかけて。俺、今日からここに暮らすことになった、宮下翔。」

僕が聞こうした途端、僕の声を翔と名乗る男は自己紹介でかき消した。
< 6 / 33 >

この作品をシェア

pagetop