彼女の10円。
始まり
「イチ!!早くしろって!!」



イチ



俺の名前。



俺は16年間、市川 太一。



ワザワザ、イチを2回も繰り返す名前にしなくてもよかったのに。



だから俺は『イチ』と呼ばれてる。



「拓、後ろ乗せて♪」



拓。



紺野拓也。



拓は親友。



俺の隣の家に住んでる。



幼なじみってやつ?


毎朝俺を迎えに来る。



拓のチャリのケツに乗って学校に行く。



それが日課。



学校が近づくに連れて、俺と同じ服を着た奴らとすれ違う。



「たっくん、イチ君♪おはよ♪」



「「おぅ♪」」



女の子に声をかけられたら嬉しい。



チャリ置き場にチャリを止めて拓と一緒に教室まで歩く。



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