君の檻から出されたなら。
***
「なぁ………少しでいいんだ」
俺は今日も懲りることなく彼女に尋ねる。
「………」
その声に反応した彼女は
読んでいた本から俺に視線を移すと
細長い髪を揺らして柔らかく笑うんだ。
「だめよ」
そう言った彼女はまた手元の本に視線を落とした。
無駄な動きなど一切ない。
誰もが見惚れるであろう美しい彼女は、仕草さえ綺麗だ。
< 1 / 35 >