教科書を広げて


おじさんはレジの横に置いてある黒電話の受話器を取ると、番号を回しはじめた。

私は"ショートプリンセスロード"を開きながらも、おじさんの声に聞き耳をたてる。



トゥルルル〜

トゥルルル〜

トゥルルル〜


ガチャッ

「おう!!俺だ。」


オレオレ詐欺師(サギシ)もびっくりな潔(イサギヨ)い"俺だ"に私は笑いを堪える。

相手の息子さん?は慣れているのか、おじさんが名乗ることはなく自然と話が進んでいった。



「〜と言うことなんだ。」

説明が終わるとそこからおじさんと息子さん?の言い合いが始まった。


「ケチケチしないで静ちゃんに貸してやってもいいじゃないか!!」

私にはおじさんの声しか聴こえないから分からないけど、やっぱり大事な物だったに違いない。


一向(イッコウ)に終わらない電話。

段々と申し訳ない気持ちになってきた。


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