教科書を広げて
「おじさん、もうい」
「条件があるそうだ。」
「へ?」
苦虫を潰したような顔に不安を覚える。
きっと精一杯(セイイッパイ)交渉して、の条件だろう。
「・・・どんな?」
「いくぞ?」
「うん。」
「
一つ、教科書を信じること。
二つ、教科書に書かれた使用要領(シヨウヨウリョウ)は守ること。
三つ、教科書を大切に扱うこと。
だそうだ。
それを守るなら貸すとよ。」
ホッと胸を撫(ナ)で下ろす。
条件とか言うから無理難題(ムリナンダイ)を言ってくるかと思った。
息子さんは本を大事にする優しい人に違いない。
「おじさん貸して!!」
おじさんからまだ繋(ツナ)がったままの受話器を引ったくり
「絶対守るから!!」
強く宣言する。
凄く大事なものなのに貸してくれるんだから、そのぐらいは絶対守ろう。
受話器の向こうの息子さんは"そう"とそれだけ言うと切ってしまった。
まだお礼言ってなかったのに。
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