教科書を広げて


「ごめんなぁ?条件なんか出して・・・」

「なんで〜私が無理言ったんだし気にしないで。」


人のいいおじさんは気にしていたようだ。

「それより、ありがとう。息子さんにも言っといてね?」


さりげなく話題を変え、"恋愛の教科書"を手にとる。


これで変わることができるんなら、どんなことでもする。

退屈で枯れきった日常なんてもう真っ平(マッピラ)。

藁(ワラ)にも縋(スガ)るような気持ちだ。


「わかった。だけど、その本はオススメしないねぇ。」

おじさんは苦笑いしながら、呟(ツブヤ)いた。


それでも構(カマ)わない。

『一つ、教科書を信じること』

私は信じるよ。

本を見た瞬間ピンときたもん。

きっと何かが起こる。
いや、起こしてみせる。

"教科書"があれば大丈夫。
なんだってできるよ。

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