少年少女は夢を見る


自分が死にたいと思ったことは、数え切れないほどある。


だけど誰かに向かってこれほどはっきりと「死んでしまえばいい」と思ったことは初めてだ。

反抗期で親に反発した時も、これほどの感情は芽生えなかった。


今すぐ胸倉を掴んで、顔の原型が無くなるほど殴りつけてやりたい。

ゆらりと手を動かした所でそれを誰かの手が止めた。


「瑞姫、ごめんね」

最初にそう謝り、彼女ははきはきと言った。

「私、あなたのことすごく嫌い」

こっちが毒気を抜かれてしまうぐらい率直に、素直な意見を述べた。

「あなたは自分勝手でわがままで、私の気持ちなんて全然考えてくれなかった。あの時だって私は、瑞姫が謝ってくれればそれでよかったのに」


きっとこれを口にしたくて、でもできなくて、ずっと苦しんできたんだろう。

だけどそれを言っても許されるぐらい、君は充分傷付いて悩んできた。

もう、いいじゃないか。


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