少年少女は夢を見る
彼女は名前にもある通り、確かに「姫」だった。
美しく朗らかで、彼女を愛する人はたくさんいた。
だから平民の気持ちなんて知ろうともしなかったんだろう。
彼女の狭い世界はそこで完結していたんだ。
「私だって別に奈里のこと、好きなわけじゃなかった。新しいクラスになって友達がいなかったから、側にいてあげただけだし」
“側にいてあげただけ”。
それを聞いた瞬間、奈里ちゃんの肩がぴくりと震えた。
どこまでも居丈高で、自分の悲なんて認めようともしない。
だけどその強い影響力は彼女を愛する平民をことごとく振り回す。
奈里ちゃんだって、心の底から彼女が嫌いだったわけじゃなかった。
――瑞姫がね、私のこと親友だって。
――今日、瑞姫と一緒に帰るんだ。
うれしそうに「親友」を自慢する奈里ちゃんを、俺は何度も見てきた。