少年少女は夢を見る


奈里ちゃんはあんたにも優しかっただろう。

なのにどうしてそれを踏みにじるようなことができるんだ。


「ごめん瑞姫。私、もう、瑞姫と話したくない」

今にも泣き出したいだろうに、奈里ちゃんはどこまでも冷静に彼女を拒絶した。

歯噛みしていた彼女はしばらくすると急にやる気を削がれたように肩を落とした。


さっきまで彼女の周りにみなぎっていた毒々しい空気は、しゅるしゅると勢いを失くす。

「…そーだね。私も、奈里と話すのはもうこりごり」

別れを告げて帰っていくその背中が、何だかとても寂しそうに見えて。


本当は今まで言ったことは本心じゃなくて、奈里ちゃんの言葉に反抗しようとしただけだったんじゃないかなんて、都合のいいことを考えてしまう。


「…死んじゃえばいいのに」

その言葉が耳に届いた瞬間、金縛りが解けたようだった。

奈里ちゃんがそんなにあの人を嫌っていたなんて思いもしなかったから。


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