校舎と夕日の間から
遅い夕食の買い物に来る主婦達で、スーパーの駐車場は混み合っていた。
車を停める為にバックをする俺は…直の横顔を見つめた。
俺を見ずに、前を向いたままの直…
学校から一番近いこのスーパーに、
紅しょうがが売っていないことを願った。
「先生!!あったよ!!いっぱいある!」
直はどうしてそんなに嬉しそうなんだぁ?
まぁ、いっか。
お前の元気な顔を独り占めできて、俺はパワーをもらったよ。
レジに並ぶ直の頭にそっと手を乗せた。
「よしよし」
俺が頭を撫でると、ほんのり頬を赤らめて、直が俺を見た。
一瞬だけ見せた『彼女』の顔。
いいだろぉ、これくらい。
本当は手を握りたかったし、
顔を見て『好きだよ』って言いたかったし、
毎日頑張ってる直を褒めたかったんだぞ。
でも、今日は『なでなで』だけで我慢する。