校舎と夕日の間から
荒木が大きな声を出せば出すほど、直の笑顔が切なかった。
洗い物をする背中を抱きしめたいよ。
いつも我慢をさせてごめん。
直は我慢をしすぎて、俺にわがままを言えなくなっているんだ。
直の笑い声だけが俺の耳に届くんだ。
「矢沢ぁ、もう交代だから、お前もどっか回ってこい!」
直は、思いきり生徒の顔で俺に微笑んだ。
「先生も、午前中ずっと頑張ってたんだから、今から回りなよ!」
そうか…
直は、ここから俺を見てたんだなぁ?
もう。
かわいいんだから!
窓から中庭を覗くと、やきそばの屋台がよく見えた。
俺は直からの愛を受けながら、働いていたことに気付き、幸せを感じる。