校舎と夕日の間から



少女の後ろに見えたその子の母親は、やきそば屋に向かって歩いてくる。




やきそばを飲み込むことができなかった。





隣に直がいる。



これ以上、直を苦しめたくない。




「矢沢!体育教官室行って、俺のタオル持ってきてくれねぇ?」




きっと俺の声は上ずっていて、俺の顔は引きつっていた。



俺の訳のわからない頼みにも、直は嬉しそうに頷いた。




「わかった!!待っててね!」




走り出した直。


走り寄る娘。




どちらが大事かなんて選べるはずもなく、

どちらも傷つけたくはない。








< 40 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop