校舎と夕日の間から
少女の後ろに見えたその子の母親は、やきそば屋に向かって歩いてくる。
やきそばを飲み込むことができなかった。
隣に直がいる。
これ以上、直を苦しめたくない。
「矢沢!体育教官室行って、俺のタオル持ってきてくれねぇ?」
きっと俺の声は上ずっていて、俺の顔は引きつっていた。
俺の訳のわからない頼みにも、直は嬉しそうに頷いた。
「わかった!!待っててね!」
走り出した直。
走り寄る娘。
どちらが大事かなんて選べるはずもなく、
どちらも傷つけたくはない。