校舎と夕日の間から


「はいはい!!早く中入って!!」


入場券まで買ってくれていたゆかりが、無理やり俺と直の背中を押した。




あまりの勢いに、受付の係りの生徒にも俺が「新垣和人」だってこと、バレてない。




真っ暗なお化け屋敷の中は、さっき荒木と入った場所と同じだとは思えなかった。



それは、直がいるから。



真っ暗なお化け屋敷の中で、俺は必死で直を見ていた。




落ちてきた笹の葉っぱに驚いて「キャー」と叫ぶ直。


段ボールの壁にぶつかって「ひぃ~」と声を上げる直。


俺のジャージの上着の袖をぎゅっと掴む直。




そんなに掴むと伸びるだろぉ…


別にいいけどな。




「直…」


つい呼んでしまった。



直は恐怖で俺の声なんて聞こえてねぇんだ。





< 48 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop