校舎と夕日の間から
「はいはい!!早く中入って!!」
入場券まで買ってくれていたゆかりが、無理やり俺と直の背中を押した。
あまりの勢いに、受付の係りの生徒にも俺が「新垣和人」だってこと、バレてない。
真っ暗なお化け屋敷の中は、さっき荒木と入った場所と同じだとは思えなかった。
それは、直がいるから。
真っ暗なお化け屋敷の中で、俺は必死で直を見ていた。
落ちてきた笹の葉っぱに驚いて「キャー」と叫ぶ直。
段ボールの壁にぶつかって「ひぃ~」と声を上げる直。
俺のジャージの上着の袖をぎゅっと掴む直。
そんなに掴むと伸びるだろぉ…
別にいいけどな。
「直…」
つい呼んでしまった。
直は恐怖で俺の声なんて聞こえてねぇんだ。