校舎と夕日の間から
校舎の影 【完】
炎の色と沈みかけの夕日の濃いオレンジが重なる。
次に振り向いた俺の目に…
直が映ることはなかった。
さっきまで直がいたフォークダンスの輪の中に、もう直はいなかった。
荒木の手を握った俺が見たのは…
とてもとても美しい涙だった。
校舎の壁にもたれた直。
泣いている彼女を抱きしめることもできない。
眩しい夕日のせいで、直の影と、光る涙だけが俺の目に映った。
誰にも見つからない場所で
必死で自分の心を守ろうとする直。
今すぐ荒木の手を振り払って、この輪の中から抜け出して
お前を抱きしめたいよ。
震える肩を抱いて、安心させてやりたい。