【完】キスしてッ! -年上甘々☆溺愛カテキョ-
「860円になります」
笑顔で言う店員さんの前で、普通にお財布を出す穂見くん。
ちょ、ちょちょ!
時間を割いてもらったのは、奢ってもらうためじゃない。
今日は私がエスコートする日!
私は今にも野口さんを出しそうな勢いの穂見くんを慌てて止めた。
「だ、ダメ!私が先!」
あとでお金渡すのじゃ、後味が悪い。
それににきっと、優しい彼のことだから“いいよ”、とか言って受け取ってくれないと思う。
「これで!」
私は鞄の中から長財布を取り出し、穂見くんより先にお金を置いた。
すると店員さんが歪みそうな口元をなんとか抑えながらお会計をしてくれる。
……は、恥ずかしい…。
この上なく恥ずかしい。
未だに笑いをこらえている店員さんを見て、自分がとても恥ずかしい事をしたのに気が付いた。
だ、だって…。
お会計でムキになる女の子ってそういない。
ましてや、「払うのは私!」なんて男勝りな人は…。
ため息を吐きながらお釣りをもらう私を見て、穂見くんはクスクスと笑っていた。
あーあ、見苦しいところ見せちゃった。