【完】キスしてッ! -年上甘々☆溺愛カテキョ-
せめて、言い方を可愛くしながらお札をだせばよかったなぁ。
ズーンと激しく落ち込んでいる私は、穂見くんに引っ張られながらカフェの出入り口へと歩いていく。
…舜くんに、一声かけて帰ろうかな。
め、迷惑じゃなければ……。
なんて思い、さっきまで自分がいた椅子に座っていた舜くんに大きめの声をかけた。
「舜くん、バイバイ」
「…………………」
む、無反応……!
やっぱり迷惑だった?
…もしかして、あの女の人が出て行ったっきり帰ってこないのが、よっぽどショックなのかな…?
私があの場にいなければ、舜くんはすぐにでもあの人を追いかけることができたかもしれなかったんだ…。
こっちに顔も向けてくれない舜くんに、少し気持ちが曇る。
あの人がもし本当に、彼女さんだったら…。
そう考えると、ヘンに胸の奥がチクチクと痛い。
キレイで美人で細い人だったし…。
ああいう人がタイプだったんだ…。
ぐるぐる考えると、ますます胸が痛い。
………舜くん。
ガラス張りになっている店内を外から見て、涙を必死にこらえた。
だって、好きな人の幸せを願いたい。
けど、舜くんがあの女の人を追いかけて出て行かなくてよかったって、一瞬思ってしまった。
…そんなの、ダメなのに…。