【完】キスしてッ! -年上甘々☆溺愛カテキョ-
腕に纏わりついてくる女どもを突き放して踵を返すと、悠河に腕を掴まれる。
「頼むって!ひなのこと、なんっでも教えてやるからよ!!」
…あいにくだが、聞きたいことがあったら本人に聞くから別にいい。
というか、マジでそれどころじゃない。
このままじゃ、ひなは俺に彼女がいるとか誤解したまま…。
「もう家庭教師がいなくても大丈夫だよ」なんて言って、俺を解雇しかねない。
それだけは絶対に避けたいが…。
今は理奈子との婚約解消が最優先だ。
…理奈子の親には、世間用語で言う政略結婚のような話を持ちかけられていて、お互い大会社の跡取りだけにこちらも悪い話ではない。
でも、実際経営状況が悪いのは向こうの方で、俺の方は理奈子と婚約しようがメリットがないんだ。
だから父さんに言えば、多少どうにかなるかと思うけど…。
母さんが「このまま一人身なんてダメ!」とか意味不明な理由を付けて、無理やりにでも結婚に持ち込みそうだし…。
額に手を当てて、さらに深く大きなため息を漏らす俺を見て、悠河がつまらなそうに呟いた。
「理奈子、タイプじゃないんだろ?新しい子探せよ。もうすぐクリスマスだしな!!」
…クリスマスはもう予定入ってんだよ。
ま、ひなのやる気によっちゃ、勉強になるだろうが。
なんて余裕をかましていた俺に、悠河からとんでもない架空の話を聞かされる。
「まぁ、ひなはクリスマスなんか忘れて勉強してるかな~?…あ、零とデートだったりして」
………『零』って…。
デートって…。
アイツ、彼氏できたのか?
…もしかして、この前カフェでひなと会ったときに一緒にいたヤツ?