【完】キスしてッ! -年上甘々☆溺愛カテキョ-
その女は慌てた様子で、山井悠河の隣……。
つまり、俺の後ろに座った。
あーもう、うるせぇな。
ここに座った意味が全くない。
最悪だ、この男。
チッと小さく舌打ちをした俺に気付かない山井悠河は、そのまま話を進めていく。
「今さ、幼なじみの家庭教師的な人探しててさ。よかったら、やってくんね?」
「わ、私でよければっ……。女の子?」
「あぁ、女子女子!」
…女なんて、なおさら無理だ。
俺の顔だけ見てきゃーきゃー言うような生き物と、同じ空間にもいたくない。
断っておいてよかった。
と、一人安堵していると、山井悠河の口から聞き覚えのある名前が飛び出す。
「今女子校に通ってる、高校3年なんだけどさ!春沢ひなって名前で~」
「可愛い名前だね!女子校なんだ~」
……………ちょっと待て。
“春沢ひな”?
その名前には、いくつもの綺麗な思い出が詰まってる。
唯一、幼いながらの俺が俺でいられることができた小さな日だまり。
高校3年生ってことは……2歳差…。
あの子とは確か、3歳差だったか。
同姓同名って怖いな。
はぁーっとため息を吐く俺に、でっかい声が聞こえてきた。
「そうなんだよ!もう17なのにオレと結婚してくんないんだよ!!」
……17。