【完】キスしてッ! -年上甘々☆溺愛カテキョ-
困ったな…。
これじゃぁ、悠ちゃんに会いにいくどころか、迷子一直線になっちゃう。
「本部まで…」
行きたい、と言いかけても周りの音にかき消されてしまう。
ゆ、悠ちゃーん…。どうしよ…。
その人たちは私の言葉なんか全く耳に届いていない様子で、どんどん進んで行ってしまう。
…それも私の手を、しっかり引いて。
こんなとき、美織ちゃんがいてくれれば…。
って、ダメダメ!
美織ちゃんは今、ラブラブなんだからっ。
「あ、あのっ!」
勇気を振り絞って思いっきり大声を出すと、さすがに聞こえたのか、手を引いていた人が振り返ってくれた。
「本部に…………」
行きたいんですけど、ともう一度言おうとした瞬間にパッと手が離れる。
え……?
なんでいきなり…?
繋いでいた手を見つめていると、すぐに甘い匂いに包まれた。
「お前ら、誰に手ぇ出してんだよ」
……この声は…。
「チッ、男連れかよ」
ほぼ毎日聞いている、あの人…。
ペッと唾を吐き捨てて去っていく男の人たちを見送った後、後ろを振り返ると…。
やっぱり。いつもだったらもう少しキレのある甘い匂いの人。
…今日は、なんだか甘ったるいにおいを放っている舜くんだった。