神崎探偵事務所へようこそ!!
①事件はそっと、隣人のようにやってくる。
◆◆
聖ちゃんたちと慌ただしい朝食を済ませた後。私はミキちゃんの車に乗って学校へと向かっていた。
神崎律子=Mariaの娘だから、クルセイドに狙われるかもしれない。
私の送迎戦争の理由にはそんな事が隠れてた、と知ってからは聖ちゃん達の束縛も甘んじて受け入れるようになった。(最近だとクルセイドどころか芹沢組にまで恨みを買う行為をしちゃったからねぇ……。)
でも……でもね?
やっぱりホッとするのは、聖ちゃんたちじゃなく、ミキちゃん!!
聖ちゃんたちは、あわよくば私の体に触ろうとしてくるんだけど……ミキちゃんは絶対にそんなことはせずに、私の話をちゃーんと聞いてくれるんだもん。
持つべきものは兄ではなく、出来た姉!ミキちゃんとの通学の時間は私の楽しみの時間でもあるんだ。
なのに…………
「美優。」
「ん?何??」
「明日からしばらくは美優の送迎は無理になるから。」
「ええっ?!!」
ミキちゃんはこんなひどいことを言い始めた。
「しばらくって……どれくらい?」
「うーん、そうね……。とりあえずお店の女の子が足りてない、って話はしたでしょ?そのせいで、今、めちゃくちゃ忙しいのよ。だから、何人か女の子がお店に入るまでは……送迎は難しいと思うの。」
ええーーっ?!
朝の問題がこんな形で私に降りかかるなんてー!!
ショックを受けながら
「い、いやだ!!」
せめてものワガママをミキちゃんにぶつけると
「……ごめんなさい。お仕事が大変になると、正直、朝起きてるのが辛いのよ。ただ運転するだけならいいんだけど……私たちには他に気を配らなきゃいけない事情もあるしね。」
ミキちゃんは愛車のミニクーパーのハンドルを握りながら、ハァとため息を一つ吐く。
ミキちゃんの言うところの『他にも気を配らなきゃいけない事情』って言うのは、言わずももがな、クルセイドの動向だろう。
お仕事終わりで眠くて、疲れている状況の時に、気を張り続けるのは至難の技だ。そんな時に奴らが何かを仕掛けてきたら……防戦するどころかアッサリやられて捕まるのが関の山だ。
あ~ぁ。
ミキちゃんとお話できないのは寂しいけれど……こればっかりは仕方ないよね。
そう思って、嫌々ながらも「わかった……。」と返事をすると、ミキちゃんは困ったように微笑んで
「聞き入れてくれてありがとう。美優、大好きよ。」
そう言って私の頭をポンポンと叩いた。