マイハニー
更衣室で着替えて、辺りを見渡しながらトレーニングルームに入っていくと
ヒップホップ系の音楽ががんがんと流れていて、
何人かが、エアロバイクを運転していたり、
ダンベルを持ち上げていたりしていた。
私はランニングマシンの所に行って、
説明書を見て確認してから
ベルトコンベアのようなマシンに足を掛け、乗ってみた。
持ってきていたiPodを取り出し、
ヘッドフォンをして、オンにした。

これこれ、岡田くんが好きって教えてくれたインディーズバンド。
今、どっかで岡田くんも同じ曲を聴いていたらいいのに。

スタートボタンを押し、ゆっくり歩いてみる。
速度を少し早めて、軽くランニングするくらいの早さで走りだした。
30分くらい走っていたら、しっとりと汗をかきはじめる。
もう少し速度を上げようかな、って思っていたら、いきなり音楽が変わった。
後ろから誰かがヘッドフォンを外したのだった。

だれ??と振り返ると、お兄ちゃんがニヤニヤして立っていて

「こんな速度じゃ、30分走ってもご飯茶碗1杯分のカロリー消費だぞ」

と笑いながら言った。


「親父から聞いたぞ、ダイエットするって?」

「もう・・・お喋りだなぁ・・・お父さん」

「別に太ってないじゃん」

「太ってるよ・・・足とか・・・」


そっかぁ?とお兄ちゃんがまじまじと足を覗くので、
見ないでよ!と慌ててタオルで足を隠す。


「でも、そんなにちんたら走ってたって意味ないだろ」


とお兄ちゃんは、歩くくらい速度を落としたメーターを勝手に速めた。


「ちょ、ちょっと」

「まだまだ」

「ええ~~!!け、結構早いよ?」


必死に走る私を、笑いながらお兄ちゃんは見ている。
私は息切れになりながら、速度を落とし、ストップした。

息を整えながら「つら~~」と半泣きになっていたら
「休憩する?」って言うので、
自販機の置いてある休憩室に移動する。

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