マイハニー
「すげー声だな・・・耳キンキンする・・・」

「お、お兄ちゃん・・・」

「サヤ、いつもこんな時間に帰ってんの?」

「うん」

「親父に迎えに来てもらえよ」

「お兄ちゃんは?この時間に帰ってきてんの?」

「今日はまだ早い方だけど・・・」

「バイトって何やってんの?」

「ビデオ屋と家庭教師」


私の手をお兄ちゃんが握り
「冷てぇ」と言って、
自分のコートのポケットに私の手を入れた。
お兄ちゃんのポケットの中は暖かくてほっとする。


「なんでいきなりそんなの始めるようになったの?」

「金貯めたいし・・・」

「家庭教師・・・最近私、数学教えてもらってないよ?」

「もう教えるとこなくなっただろ?成績上がったし」

「そうだけど・・・」

「入試、いつだっけ?」

「明後日・・・」

「そっか・・・終わったらどっか行くか」

「ホント?」

「うん、どっか行きたいとこ、決めておけよ?」

「ねぇ・・・」

「んー?」

「やっぱ・・・なんでもない・・・」

「そ?・・・早く帰るぞ」


私はお兄ちゃんがつけてくれた痣消えちゃったよ、
という言葉を飲み込んだ・・・。
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