マイハニー
家に帰るとお兄ちゃんはいなかった。
そのつもりで帰ってきたのに、なんだか淋しい。

もしお兄ちゃんがいたら、いっぱい文句言って
やっぱり行かないで、って泣いてすがったような気がする。
みっともなく、甘えた妹のフリをして。
今行かなければ許してあげる、と優しく言ってあげるのに。


お兄ちゃんの部屋のドアをそっと開けるとガランとしていた。
子供の頃から使っていた勉強机と椅子だけが置いてあった。

小さい頃に貼ったんだろう、シールや、落書きは
私の知らないお兄ちゃんを知っている。


教えてよ。
もっとお兄ちゃんのこと。
私が嫌いになっちゃった?
だったら理由を教えてよ。
こんなんじゃ納得いかないよ。


妙に広く感じる部屋で、椅子に腰掛ける。
傷がいくつもある勉強机をそっと撫でた。
ポタリと涙が落ちて、水溜りのようになった。

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