マイハニー
春になったとはいえ、空気はまだ肌寒かった。
両手を合わせ、擦りながら待っていたら
階段を上がってくるカンカンカン、と高いヒールの音が聞こえた。
慌てて立ち上がり、スカートのお尻のところを払う。

なんだ、女の人か・・・。
お隣さんかな?
やだな、あんな人が同じアパートに住んでるなんて。

すれ違う時、私をちらっと見た女の人は、
鍵をとりだし、部屋を開けた。


203号室


・・・どういうこと?
・・・誰?

メモを見直す。
やっぱり203号室だ。

頭が真っ白になり、パニックになってどうしていいのかわからず
階段を降りた。
最後の1段を降りたところで、
誰かとぶつかって、ケーキの箱が落ちた。

あ・・・

ケーキの箱を拾おうとしたら、頭上から声が聞こえた。


「・・・サ、サヤ?」

「おにい・・・ちゃん?」


私の腕を掴もうとしたけど、その手を払いのけ
ケーキの箱をそのままにし、走り去った。
< 156 / 200 >

この作品をシェア

pagetop