マイハニー
勉強もなんだかつまんなくて、だからと言って部活に入るわけでもなく
ドーナッツ屋でアルバイトを始めた。
バイト先の、大学に入学したばかりという人と付き合うようになった。

ぼーっとしていると、お兄ちゃんのことを考えてしまう。
考えたくなかった。
お兄ちゃんのことを頭の中から消したかった。
だからその彼とセックスをした。
人形のように動かない私といても楽しいはずがない。
すぐ別れた。

その後も何人かと付き合った。
愛のないセックスは楽しくもないし、気持ちよくもない。
でも寂しくて、誰でもいいから触れたかった。
やっている間だけ、私の中の空虚を埋めた。


誰とやっても同じだった。
どこかでお兄ちゃんと比べてしまう。


お兄ちゃんの吐く卑猥な言葉、吐息、心臓の音、耳が覚えている。

お兄ちゃんの熱い体温、優しく激しい愛撫、身体が覚えている。

優しい眼差しも好きだったけど、鋭く睨まれるのも大好きだった。

あんまり笑う人はでなかったなけど
優しく微笑まれるのが好きだった。意地悪な笑みも大好きだった。
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