マイハニー
お兄ちゃんはたまに家に帰ってきているらしい。
タイミングよく私とは会わなかった。
というか私はほとんど家にいなかった。
お兄ちゃんが帰ってきていると知ってからは
ますます家に近寄らなくなった。
会いたくなかった。

「サヤの分」とメモ書きして置いてある手土産のケーキは
私があの時落として捨ててきたチーズケーキだった。

何、この字。
大好きなお兄ちゃんの字。
へたくそだな。

食べたくなんかなかったけど、
ケーキに罪はないか、と言い訳しながら
フォークをぐさぐさと突き刺すようして食べた。
美味しかった。
濃厚で、クリーミーで、絶妙な甘さ加減。

無心で食べていたら、気付くと泣いていた。
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