マイハニー
駅までの道のり、話すこともなく、2人とも無言で
私のブーツのヒールが放つカツカツという音だけが響いた。

いっぱい聞きたいことがあるのに。
いっぱい話したいことがあるのに。

お兄ちゃんの歩く速度は相変わらず速くて、
小走りで付いて行くと
それに気付いたお兄ちゃんが、振り返って止まり、
そこからは速度を緩めた。

電車は帰宅ラッシュで混雑している。
吊革も手すりも掴まれなかった私は
カーブで大きくよろけてしまった。
お兄ちゃんの手が腰に回る。
見上げると「大丈夫か?」と聞いてくる。

どうか心臓の音が聞こえませんように

お兄ちゃんが私をしっかりと支えながら
話しかけてきた。


「・・・大学はどう?」

「・・・普通かな・・・友達もほとんど高校の時と同じだし・・・」

「そっか・・・」


間がもたない。
あんなに何時間もおしゃべりができたお兄ちゃんなのに。

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