マイハニー
「な、あっち行こ・・・」


ぺたりと力が抜けて座り込んでいる私を抱きかかえた。


「重いよ」

「重くないよ」


サヤをこうやって抱きかかえられるように
俺、ずっと鍛えるから、
じーさんになって、おまえがばーさんになっても、さ。


ふざけて言うお兄ちゃんの胸に顔をうずめて、
おもいきり深呼吸をする。

懐かしい、お兄ちゃんの匂いがした。

お兄ちゃんは香水とか香りのきつい整髪料をつけないので、
殆ど匂いはしなかったけれど、
こうやって直に身体に鼻をくっつけたら匂いがする。
汗はよくかくけれど、かいてもイヤな匂いじゃなくて、
落ち着くことができる大好きな匂い。
くん、と鼻を動かすと、
鼻孔の奥でその香りの記憶の扉が次々と開いていく。

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