マイハニー
顔がどんどん近づいてくる…
鼻と鼻がくっつくくらい近づいてきて…
お兄ちゃんがくぐもった声で
「目、閉じて」
と言う。

慌ててぎゅっと目を瞑る。
すぐそこにお兄ちゃんの顔がある気配がした。

心臓はさっきからドキドキしっぱなしで、
口の中はカラカラに乾いている。


「ってな感じよ」


いきなり声のトーンが変わって
頭をポンと叩かれた。


「今みたいな表情だと岡田もたまんねーんじゃね?」

「そ、そうかな?って自分じゃどんな顔かわかんないんだけど」

「今、俺ですらキスしそうになったもん」

「ばっバカ、何言ってんのよ」

「ハハッ、まぁ頑張ってくれたまえ」


お兄ちゃんは笑って、リモコンを手に取り
チャンネルをニュースに合わせ、
どっかのバカが起こした幼児虐待の事件を見ている。


最近、お兄ちゃんが気になってしょうがない。

さっきも本当にキスされるのかと思った。
ドキドキした。

岡田くんが好きなはずなのに
岡田くんのことを忘れている。
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