マイハニー
「…お酒、臭い」
「ああ、結構飲んだから」
「女の人も一緒?」
「まぁ、何人かいたよ」
「ずっとずっとずっとお兄ちゃんが帰ってくるの待ってた…」
「…ごめん」
「…お兄ちゃんも…女の人を…求めたりするの…?」
「え…そりゃぁ、まぁ…そういう雰囲気になれば…
って、もしかして…岡田にやられたのか?」
「…」
「サヤ!黙ってちゃわかんないだろっ!」


私は思い出したくない記憶を捨て去るかのように、
今日の出来事を話し始めた。


寸での所で逃げたこと。
とても怖かったこと。
お兄ちゃんがいなくて寂しかったこと。
お兄ちゃんに早く会いたかったこと。

うまく説明できずに頭の中で断片的に言葉にしてみる。

無理やりされたキス…。
初めてのキス…。
半分下ろされたファスナー…。

思い出すと苦しくて悲しくて
両手で顔を覆って溢れる涙を流しっぱなしに
泣いていたら、
お兄ちゃんがぎゅっと抱きしめてくれた。
お兄ちゃんの胸の中で嗚咽する。
背中をさすってくれる手が温かい。


「ファーストキスだったのに…」


口に出したら、また涙が溢れ出し、
お兄ちゃんの広く厚い胸に顔を押し付け泣いた。
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